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千葉地方裁判所 平成5年(行ウ)20号 判決 1994年7月29日

千葉市佐倉市新町五〇番地一

原告(選定当事者)

小澤功子

千葉市成田市加良部一-一五

被告

成田税務署長 本多三郎

右指定代理人

徳田薫

高梨六郎

石津佶延

長谷川貢一

内野茂

矢沢峰夫

今井廣明

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が平成五年八月三〇日付でした、別紙選定者目録記載の四名からの平成二年三月二一日相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分に対する異議申立てをいずれも棄却する旨の異議決定を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は、平成五年三月三一日付で、原告を含む別紙選定者目録記載の四名(以下「原告ほか三名」という。)に対し、平成二年三月二一日相続開始に係る相続税の更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「原処分」という。)をした。

2  原告ほか三名は、平成五年五月三一日付で、原処分に対する異議申立てをしたところ、被告は、同年八月三〇日付で、右異議申立てをいずれも棄却する旨の決定(以下「本件異議決定」という。)をした。

3  しかし、本件異議決定には次のような違法事由がある。

(一)(1) 被告は、本件異議決定書に、本件異議決定の理由として、「申立人らは、原処分庁の職員による本件被相続人の相続税に関する税務調査に協力しない」との記載(以下「本件記載」という。)をした。

(2) 本件記載に係る事実は、本件異議決定の理由とはならず、法令上異議決定書への記載を要求されていない事項に関するものであるから、右(1)は違法である。

(3) 原告ほか三名は、右税務調査に全面的に協力しているから、右(1)は違法である。

(二)(1) 被告は、原処分の通知書に本件記載をしなかった。

(2) 原告ほか三名が、被告に対し、平成五年八月三一日付求釈明申立書を提出して、本件記載につき釈明を求めたところ、被告は、これに対する回答を行わず、担当職員は、審査請求における答弁書で回答をするとの理由で右回答を拒否した。

(3) 本件記載に係る事実の誤認は、国税不服審判所長に対する審査請求の理由とならないので、被告には、右事実につき、原告ほか三名に対して審査請求に代わる不服申立ての機会を与えるか、又は原告の求釈明に対して回答する義務があるから、右(1)及び(2)は違法である。

4  よって、原告は、本件異議決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1、2並びに3の(一)(1)、(二)(1)及び(二)(2)の各事実は認める。

2  同3の(一)(2)、(一)(3)及び(二)(3)の各主張は争う。

三  被告の主張

1  本件異議決定書に本件記載をしたことは裁決固有の瑕疵を構成しない。

2(一)  更正通知書の記載事項を規定する国税通則法二八条二項は理由付記を要求していないから、原処分の通知書に本件記載をしなかったことは違法でない。

(二)  原告主張の求釈明は本件異議決定後の事実であるから、これに対する回答を拒否したことは裁決固有の瑕疵を構成しない。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1、2並びに3の(一)(1)、(二)(1)及び(二)(2)の各事実は、当事者間に争いがない。

二  請求原因3の(一)(2)の主張について

そもそも、法令上記載を要求されていない事項に関する事実が異議決定書に記載されたからといって、当該異議決定が直ちに違法となるわけではないから、原告の右主張はそれ自体失当というべきであるが、成立に争いのない甲第二号証によれば、本件記載に係る事実は、原告ほか三名の相続税の課税価格を算定するにあたり、原告ほか三名の取得財産から債務控除されるべき葬式費用の金額を確認できないことの理由の一つとして掲げられていることが認められるところ、右事実は、右金額を確認できないことの理由となりうる事実であることが明らかであるから、国税通則法八四条五項において異議決定書への記載を要求されている「維持される処分を正当とする理由」に含まれると解される。したがって、いずれにしても右主張の違法はない。

三  請求原因3の(一)(3)の主張について

行政事件訴訟法一〇条二項によれば、行政処分の取消しの訴えとその処分についての審査請求を棄却した裁決の取消しの訴えとを提起することができる場合には、裁決取消しの訴えにおいては、処分の違法を理由として取消しを求めることができないとされており、したがって、右の場合の裁決取消しの訴えにおいては、当該裁決固有の違法事由、すなわち当該裁決の主体、手続等の形式に関する違法事由に限り主張することができるものと解するのが相当であるところ、原告の右主張は、原処分の実体に関する違法事由をいうものにほかならないから、本件訴えにおいては、主張自体失当である。

四  請求原因3の(二)(3)の主張について

請求原因3の(二)(1)は原処分に係る事実であり、また、同(二)(2)は本件異議決定後の事実であるから、いずれも本件異議決定固有の違法事由とならないことは明らかである。したがって、原告の右主張はそれ自体失当というほかない。

五  以上のとおり、本件異議決定に原告の主張するような違法事由はなく、右決定は適法であると認められる。

六  よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法四七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河野誠之 裁判官 安藤裕子 裁判官 有賀直樹)

選定者目録

千葉県佐倉市新町五〇番地一 小澤功子

千葉県鎌ケ谷市鎌ケ谷一丁目七番一八-三〇三号 小澤喜之輔

千葉県佐倉市鏑木町一〇四七番地三七 柳谷慶子

横浜市栄区笠間町五二一番地第二大船パークタウンD棟七〇六号室 松島淳子

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